【女子バレー】新セッター宮下遥。不安の涙から強豪と戦う喜びへ (3ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 坂本清●写真 photo by Sakamoto Kiyoshi

 チームの成績が下がっても、河本監督が宮下の起用を止めなかったのは、「彼女を世界に通用するセッターに育てる責任が私にはあると信じたからです。そのためには、少しでも早いうちから、たくさんの『セッターとしての経験』を積ませなければならないと思ったので、迷いなく使い続けました。他のチームメイトには正直、申し訳ないことをしましたね」。

 宮下がセッターを務めるシーガルズはロンドン五輪前のシーズン、4位に入り、ファイナルラウンドを経験した。そして昨季は3位と、少しずつステップアップしている。

 ブラジルがまだ今のような強さを確立していなかった頃、代表監督のギマラエスに取材したことがある。彼も長身セッターを育てようとあれこれ苦心していたのだ。ギマラエス監督は、「セッターは経験が最も大切。それも、他のポジションとしてコートに立ったのではダメ。セッターとしてコートでプレイした経験がものをいうポジション」とコメントしていた。

 そのギマラエス監督は、29日の日本との対戦後、宮下について「竹下は非常に多くの経験を積んできたセッターだったから、彼女のスピードなど全てをまねすることはできなかったかもしれないが、宮下については個人的に非常に気に入りました。スピードも良かったですし、どこを使うか、というアタッカーの振り分けも非常に良かった。とても若いので、まだまだ学ぶことはたくさんありますが、間違いなく日本のトップセッターに名前を連ねることになるでしょう」と断言した。

 ギマラエス監督は、まだ日本のメディアが他の人気選手たちをエースともてはやしていたころ、すでに「個人的に気に入ってるのは木村沙織選手。日本的でありかつ世界に通用するプレイヤー」と絶賛していた目利きである。

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