錦織圭から聞いたことのない発言「カッコいい姿を子どもたちに見せたい」。コートを離れた9カ月間で変わったこと (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

錦織圭の復帰予定はいつ?

 実際に全仏を制したのは、これが同大会14度目の戴冠となるラファエル・ナダル(スペイン)。そして、ウインブルドンのセンターコートでトロフィーを抱いたのは、35歳のノバク・ジョコビッチ(セルビア)。36歳になったナダルのグランドスラム優勝回数は22に至り、ジョコビッチが21で追走する。あらゆる記録を塗り替え続けるふたりのレジェンドは、"変わらざるもの"のシンボルだ。

 ナダルとジョコビッチのグランドスラムでの支配力は、世は何も変わっていないかのような幻覚を生む。ただ、ツアーに身を置く選手の皮膚感覚からすれば、変化は確実に生まれているという。

 29歳のダニエル太郎は、昨今のテニス界に起こりつつある現象として、「若い選手たちのテニスが変わってきた」ことを挙げた。

「身体が大きくてパワーのある若い選手が、質の高いボールを打っている。2〜3年前の僕は、若手を見て、あんなにミスが多かったら勝てるようになるまで時間がかかると思っていた。でも、彼らは威力のあるボールを打ち続け、それが入るようになってきた」

 ダニエルがそう語ったのは、昨年の初夏。そのニューウェーブの筆頭がアルカラスであり、21歳で世界9位のフェリックス・オジェアリアシム(カナダ)や、20歳で世界10位のヤニック・シナー(イタリア)だ。あるいは、先のハンブルグ欧州オープン決勝でアルカラスを破ったロレンツォ・ムゼッティ(イタリア)も20歳。彼ら新時代テニスの体現者たちが、ツアーを牽引するまでに台頭してきた。

 それら、変わらざるものと変わりゆくものが交錯する世界に、錦織はいつ、どのような形で戻るだろうか?

 現在の錦織のランキングは160位。大会の出場に関しては、40位台後半の"プロテクトランキング"を使うことができる。これは公傷でツアーを離れた選手が一定期間、エントリーのみに用いることができる数字だ。

 ただ、現時点で錦織は、まだプロテクトランキングを用いていない。プロテクトランキングは使える数に限りがあるため、当落線上であったり、調整が不十分な状況では使いたくないのが実情だろう。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る