ロシアのウクライナ侵攻にテニス界も大揺れ。ウインブルドン出場が政治的な意思表明につながる危険 (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

ウクライナ選手は怒りのツイート

 ウインブルドンにポイントを与えないことにより、APTとWTAはロシアとベラルーシの選手を擁護する姿勢を示したことになる。

 その動きを、声を大にして批判するのは、ウクライナのマルタ・コスチュク(19歳)だ。ロシア糾弾の先鋒的存在である彼女は、ロイター通信社の取材に対して「今回の決断を下すにあたり、私に意見を聞きにきた人は誰もいなかった。まるでウクライナの選手は存在しないようだ」と嘆いた。

 また、最高13位の元トップ選手で、兵として前線に赴いたウクライナのアレクサンドル・ドルゴポロフ(33歳)は、ツイッターで「上出来だよ、ATPとWTA」と皮肉のつぶやき。「ウインブルドンからポイントを取り上げて、ロシアのプロパガンダを喜ばせたよ」と、行間に怒りをにじませた。

「スポーツに政治を介入させてはいけない」とは、よく耳にする惹句。だが、スポーツと政治が不可分であることは、今や誰もが知る現実だ。

「スポーツは常に政治に利用されている。そして私たちは、ある意味で公的な存在であり、世間にインパクトを与えることも事実」

 著名アスリートとしての責任を、シフィオンテクは重く語る。

 コロナ禍が明け、かつての華やぎを完全に取り戻したかに見える全仏オープン会場の赤土に、戦争の影は、じりじりと染み込むように広がっている。

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