リハビリ中の錦織圭が沖縄に突如現れた。「マリーになる寸前だった」というケガの回復具合を聞いた (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

錦織圭が教えたリターンの肝

 1月末に股関節の手術を受けた錦織は、現在は復帰を目指し、リハビリに励む日々を送っている。まだ激しい動きはできないものの、ボールを打つことに加え、徐々に左右への動きも取り入れ始めたところだ。

「順調に回復しています。今日も痛みもなく。まだ横には動けないので、ポイント練習はできないんですが、ジュニアと打つくらいなら、ちょうどいい練習になりました」

 合宿訪問初日に口にしたこの言葉が本心であることは、コート上の動きと、はじける笑顔が雄弁に物語っていた。

 なにより、伊達プロジェクトへの指導で錦織が示したのは、彼の優れた観察眼と、コート上での戦術立案法。そして、それら概念や思考を言語に落とし込む能力である。

 今回の合宿で錦織自ら、指導の核に据えたのが、リターンだった。

「自分が一番得意だし、一番基礎で軸だけれど、みんな練習をやっていない」ショットだというのが、その理由だ。

 伊達さんからの「世界一リターンがうまい錦織くん」の前口上に、「そういうの、やめてください!」と大いに照れながらも、まずはリターンのデモンストレーションを披露。

「僕が必ず心がけているのは、後ろから前に入ること。スプリットステップ(※)を踏んで、前に入って打つと、少ない力でも飛んでくれる。あとは、(ラケットを)振りすぎないこと。伊達さんもそうだけれど、テイクバックは小さく」

※スプリットステップ=相手がボールを打つ直前に小さくジャンプするフットワークの技術。重心を低くしてつま先重心となり、出だしの動きをスムーズにしてくれる効果がある。

 それらリターンのコツを具体的に説明しては、あらためてお手本を示していく。伊達さんからの「コースの予測はどうやるんですか?」との質問には、「基本は相手のトスや打ち方を見て」と即答。さらには少し間を置き、自らの思考を言葉に置き換えてから、ひと息に説明した。

「あとは、選手のクセも頭に入れておきます。この人は3回連続で同じコースには打たないなとか、選手によっては必ず毎回コースを変えたがる人もいる。すんごい、頭でも考えてますね」

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