大坂なおみの評価は世界で賛否様々。「政治のことを話すな」「戦う彼女を心から尊敬」「ミステリアスな人」 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

人種の坩堝マイアミで人気

 スイス人として『ユーロ・スポーツ』等で働くスコット-スミス氏は、テニスとアルペンスキーを中心に取材し、自身もジュニア時代は優秀なアルペンスキーヤーだった。現在の拠点はスイスで、生まれもスイスのジュネーブ。ただ、父親が英国人のため、長く国籍はイギリスだった。

「最初にナオミの存在や生い立ちを知った時、自分の子どもの頃を思いだしました。自分は英国人なのか、スイス人なのか? 母はスイス人でしたが、父と結婚したため英国籍になり、私も英国人としてスイスで育ちました。私がナオミに共感できるのは、いろんな文化が自分のなかにあり、その時々でアイデンティティを選ばなくてはいけないこと。それは難しいことです」

 そのように感じるのは、彼女自身が16歳の時に、スキー選手としてイギリスの選手団に加わった経験があるからだという。

「英国選手団に誘われた時、自分の苗字は英国名だし、自分をイギリス人だとも思っていたので、誇りに思いました。でも、やっぱり私はスイス人的な気質のほうが強かったみたいで、英国チームとうまくいかないことが多かった。社会に出る前に、自分自身を知る必要があった。その部分で、私はナオミに共感するし、だからこそ、世界中が注目するなかで戦う彼女を心から尊敬しています」

 それら敬意を示したうえで、彼女は「ナオミはエニグマ(=ミステリアスな人)」だと言った。

 大坂を「エニグマ」と表現したのは、『マイアミ・ヘラルド』紙の記者、ミシェル・カーフマン氏も同様だ。ポーランド系キューバ人の父と、大戦中にキューバに逃れたウクライナ人の母を持つカーフマン氏は、そんな自身を「典型的なマイアミ人」だとも形容する。

「ナオミは、日本、アメリカ、そしてハイチという複数の文化的背景を持っている。そしてそれは、マイアミという町も同じ。この町は人種の坩堝で、多くの人たちが人種的ミックス。ハイチ系やアジア系の人たちはナオミを誇りに思い、だからこそ彼女はマイアミで人気があるのだと思います」

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