大坂なおみは当時15歳で世界1024位。9年前に「なんてクール!」と思った元天才少女とのリベンジマッチ (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

驚いたのはベンチッチのほう

 懐かしそうな笑みに恥じらいの色も灯しながら、大坂は続けた。

「彼女はすごくきっちりとウォーミングアップをしていた。それに、当時はアディダスだったと思うけれど、彼女にはすでにいくつかスポンサーもついていた。『もうスポンサーがついているなんて、なんてクールなんだろう!』って思ったのを覚えている」

 地域のテニスクラブで開催される大会で、誰もが話題にする同期の選手に、彼女は羨望の視線を向けていたのかもしれない。

 かくして、対戦相手の姿に多くの驚きを覚えていた大坂だが、いざ試合が始まった時、驚いたのはベンチッチのほうだったようだ。

「ナオミはジュニアの試合にまったく出ていなかったので、彼女のことは知らなかった。でも試合を始めたら、彼女があまりにボールを強打するので驚いた。彼女は当時からパワーがあり、私はそうではなかったから......」

 大坂と同様に、9年前の日を鮮明に記憶しているかつての天才少女は、今になって当時をこう分析した。

「彼女はジュニアの試合に出ず、常に自分より年上の選手と対戦していた。だから彼女は、ボールを強く打つことの重要性を当時から自然と学んでいたのだと思う」

 互いが互いに異なる衝撃を与えたこの初対戦は、パワーで勝る大坂に軍配があがった。

「当時の私は戦術とかはほとんど考えず、ボールを強打するばかりだった」

 やや遠慮がちに、大坂が勝因に言及する。

 それは、常に年長者に混じり"大人のテニス"を標榜してきたダークホースが、エリートジュニア選手の定石を打ち破った瞬間でもあっただろう。

 両者が2度目の対戦をしたのは、初対戦から6年後の2019年3月。当時の大坂は、全米と全豪ふたつのグランドスラムを連続制覇し、世界の1位に君臨していた。一方のベンチッチは、度重なるケガと手術から復帰し、世界の23位まで這い上がってきた時。

 両者の立場は入れ替わり、そして、結末も入れ替わる。ベンチッチは天才と称された所以であるカウンターと展開力で大坂を圧倒し、6−3、6−1で完勝を収めた。

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