大坂なおみ、世界1位の予想を覆し、世界1位を撃破。世界1位に返り咲くカギは「天才異端児」との出会い

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

殻を破って変化を求めた予兆

 大坂の言う「ニック」とは、男子テニス界の「異端児」ことニック・キリオス(オーストラリア)。時速200キロを悠々と超えるビッグサーブの持ち主で、ことテニスに関しては天才肌のエンタテイナーだ。

 そのキリオスを参照にしたことで、大坂のサーブは「特に風のなかでもよくなった」という。「風でリズムが掴めなかった」というケルバーの言葉と、対を成すかのような大坂の自己評価だ。

 大会初戦で大坂と当たるのは、ケルバーにとっても不運なのは間違いない。その件について、第13シードは苦笑いをこぼしながら、こう語った。

「これがドローだから仕方ないとはいえ、初戦の相手がナオミというのは、あまりに厳しい。準決勝か決勝でもおかしくないカードだと思うもの。あれだけのプレーをしていれば、彼女のランキングはすぐに上がるだろうから、もう2回戦で当たらずに済むでしょうね」

 元世界1位のウォズニアッキの予想に反し、元世界1位のケルバーを破って3回戦へと堂々進んだ、元世界1位の大坂なおみ。ちなみに反対側の山では、ムホバがフェルナンデスを破ったため、3回戦で大坂はムホバと対戦する。

 くしくも先日、現世界1位のアシュリー・バーティ(オーストラリア)が引退を表明した際、大坂は自身の未来像を重ねるように、「私も世界1位で引退するのが理想」と口にした。

 これまで、外界を遮断して頑なにドローも見なかった彼女が、テレビのコメントに奮起し、男子選手に助言を求めるのも、殻を破り、変化を求めた予兆かもしれない。

 再び世界1位への険しい道を、彼女は歩みだそうとしている。その再スタートの地点として、「子どもの頃、初めて観戦に訪れた大会」であるマイアミ・オープンほどに、ふさわしい場所はない。

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