大坂なおみ、世界1位の予想を覆し、世界1位を撃破。世界1位に返り咲くカギは「天才異端児」との出会い

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

ケルバーが完敗を認めたサーブ

 ウォズニアッキが、果たしてどの程度の確信度で「ケルバーが勝つ」と予想したかはわからない。ただ、ケルバーと大坂の顔合わせが、本来なら2回戦にはもったいない好カードなのはたしかだ。

 なにしろ、今大会の出場選手のなかで最多グランドスラムタイトルを誇るのが、4度の大坂。それに続くのが、3つのトロフィーを持つケルバーである。なお、ふたりの過去の対戦は、マイアミを迎えた時点でケルバーの4勝1敗。初対戦の2017年全米オープン以来、ケルバーが4連勝中だった。

 過去の敗戦で大坂が覚えているのは、「自信を持ってリターンを打てなかったこと」だという。だからこそこの日の試合では、特に相手のセカンドサーブでプレッシャーをかけていくことを心掛けた。

 もうひとつ、大坂がカギと睨んでいたのが自身のサーブ。試合後の大坂は、「このふたつができた」ことを真っ先に勝因として挙げた。

 大坂が思う勝因とは、当然ながらケルバー側から見れば敗因になる。敗者であるケルバーの言葉は、大坂の勝利の訳を、文字どおり表裏の構図で裏づけていた。

「彼女はパーフェクトに近い試合をしたと思う。特にサーブはすばらしかった。私はリターンから崩したかったが、今日は風が強くてリズムが掴みにくかった。彼女はサーブからの展開もうまかった。常に攻撃的であり、そうあろうと心がけていたと思う。ビッグサーブも迷わず打ち込んできた。だから私は、常に守勢に回ってしまった」

 それがケルバーの、試合後の所感である。

 過去に大坂を幾度も破ってきた元世界1位だからこそ、肌身で感じる大坂の成長。その中核となるサーブの改善の背後には、意外な人物の存在があったことを大坂は明かした。

「サーブは、私がコーチとずっと一緒に取り組んできたこと。以前の私は、サーブの時に両足をピッタリくっつけていなかったけれど、コーチは『バランスを取りながら、足を揃えるように』と言い続けてきたの。

 そんな時、ロサンゼルスでニックと練習する機会があって、その時に、彼のサーブをすごく近くから注意深く見ていたのね。そしたら彼は、片方の足をこんなふうにスライドさせて、両足を揃え、爆発力を生んでいた。

 それはまさに、私が修得しようとしていた技術だったの。彼を参考にしたことで、以前よりいいリズムでサーブが打てていると感じる」

 ふたつの拳を両足に見立て、手ぶり身振りつきで彼女は改善点について説明した。

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