日本女子テニス界に新星現る。鮮烈デビューを果たした本玉真唯とは何者? (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 加えてジュニアでの成功体験が、迷いを生んだ側面もあるようだ。ある時、神尾氏が「真唯ちゃんの武器はなに? どうやって勝ってきたと思う?」と尋ねたところ、返答は「打って勝ってきました!」だった。

 その言葉を聞いて、神尾氏は首を傾げたという。

 たしかにジュニアの頃は、それで勝てたかもしれない。だが、パワーで本玉より勝る選手がしのぎを削る世界の舞台では、「打って勝つ」だけでは到底通用しない。

 そもそも神尾は、本玉の魅力を「とにかく足。よく動いて走れること」だと目していた。ただ、そのことを本人に伝えても、「私、足ありますか?」とピンと来てない様子だったという。

 そこで自身の武器を自覚させるためにも、世界基準の高く跳ねるハードコートに拠点を移し、この春にはクレーコートの大会に参戦させた。

 球足が遅い赤土では、打球は威力をそがれ、自ずとラリーが長引く。その過酷なコートで本玉は、走って粘り、ポイントを組み立て、いくつもの接戦を制した。クレーへの苦手意識が強かった本玉が、2大会を終えた時には、「私、粘れるかも。これが私のテニスかも」と笑うまでになったという。

 その見つけた「私のテニス」をさらに引き上げることを、全米オープン以降は目指してきた。

 改善点のひとつは、本玉が自分の武器と自覚した、フットワーク。神尾氏曰く、全身のバネは本玉の武器ではあるが、「上にスポンスポンとジャンプして走る」ため、安定感に欠けるところがあった。

「強打に打ち負けないためには、もっと低い姿勢で構えなくてはいけない。跳ねるタイミングや姿勢を丁寧にやるよう取り組みました」

 それが第一の改善点だった。

 そしてもうひとつ手を加えたのが、フォアハンド。フォアハンドは本玉が自信を持つショットではあるが、振り出し方などの細かい技術面にメスを入れた。

 ツアーで勝てるレベルを目指し、師弟で取り組んだ改革。だが、練習時間も限られるなか、今回の北米遠征に出る2日前には、神尾の下に「やっぱり行かないほうがいいのでは」と泣きの電話が入った。

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