大坂なおみ「自分でもよくわからない」。全米OPで突如崩壊、ラケットも投げつけ18歳に逆転負け

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「今日の試合について、何を言うべきかわからない」

「なぜラケットを投げてしまったのか、自分でもよくわからない」

「本来の私は、困難に立ち向かうのが好き。なのに最近では、物事がよくない方向に向かうと、不安で仕方がない。なぜそんなふうになってしまったのか、自分でもさっぱりわからない」

 司会者により英語の質問がいつもより早めに切り上げられ、日本語のそれに移った直後のことである。

「最近は勝っても、うれしさはなく、安堵する。負けると、悲しくて、仕方ない......。これは正常ではないと思う」

 そこまで言った大坂は、高ぶる感情を押しとどめることがもはやできず、こぼした涙をぬぐった。

 その様子に司会者が「会見はここまで」と終了を宣告するが、彼女は「最後までちゃんと言いたいから」と涙ながらに訴えると、意を決したように言葉をつむいだ。

「正確に伝えるのはすごく難しいことだけれど、今の私は自分が何をしたいのか、答えを見つける時に来たのだと思う。だから......正直に言うと、次に出るテニスの試合がいつになるかわからない」

 再びあふれ出る涙に声を詰まらせ、それでもなんとか「しばらくは、テニスから離れることにします」と言葉を絞り出すと、ぎこちない笑みとともに両手の親指をあげて、彼女は会見室をあとにした。

 彼女の言う「しばらく」がどれほどの期間を指すのか、それはわからない。

 ただ、全仏オープンでの会見拒否発言に端を発した、外界の喧騒と自らの内面に折り合いをつける彼女の孤独な闘争に勝者はなく、解決の糸口すら見えていない。

 ボタンをかけ違えたのは、彼女の心か、ビジネスとして肥大化しすぎたテニス界か、あるいは社会そのものなのか......?

 それらの課題に、大坂自身とあらゆる人々が向き合い優しく時を流した先に、きっと光はあるはずだ。

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