錦織圭、身長の低さを有利に転じた一手。GS通算99勝の経験値が生きた (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 クレーから芝への移行がいかに困難かは、錦織の2回戦の対戦相手が示しているとも言える。

 ランキング通りなら12シードのキャスパー・ルード(ノルウェー)になるところが、実際に勝ち上がってきたのは78位のジョーダン・トンプソン(オーストラリア)。全仏オープン初戦で敗れたトンプソンは、すぐに芝へと戦場を切り替え、ウインブルドンを迎える時点で3大会、7試合の経験値を積んできた。

 もとより芝が好きなトンプソンは、自信と相手への敬意をバランスよく抱きながら、初戦でシードダウンを実現。来たる錦織戦に向けても「彼はトップ10にずっといた選手。ケガでランキングを落としているだけで、実力はずっと上」と言い、自身を「アンダードッグ」と位置づけた。

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 挑まれる立場に身を置くことは、戦いの場において......とくに番狂わせの起きやすい芝においては、やはり大きなチャレンジだ。ただ、それも錦織が積みあげてきた実績ゆえであり、その実績の威光が相手の自滅を誘うこともある。

 本人は「何も感じない」という100勝の数字だが、ネットを挟む相手には何かを感じさせるのは間違いない。

 100勝の重みをひっさげ挑む一戦。それは、新たな旅路への一歩になる。

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