錦織圭、完全復活の道筋に光。目に見えて変わった数値とは? (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 ただ、注目すべきは、サーブのよし悪しを総合的に評価する『サーブレーティング』だ。

 サーブレーティングとは、ファーストサーブの確率と、ファーストおよびセカンドサーブでのポイント獲得率、サービスゲーム獲得率、そしてエース数およびダブルフォルト数の6要素から算出した数値。

「いいサーブ」の指標となるのは、270〜300あたりだろうか。なお、サーブレーティングのキャリア通算ランキングを見ると、1位がジョン・イスナー(アメリカ)の311.7。錦織は266.1である。

 では、最近の錦織のサーブレーティングはどうか?

 結果論的なところもあるが、今季初勝利のオジェアリアシム戦以降の平均数値は10試合で268.8。最も高かったのはドバイ大会のアルヤズ・ベデネ(スロベニア)戦の314で、錦織本人も「第1セットは、ほぼ完ぺきだった」と自画自賛する出来だった。

 コーチ陣からのチェックの目が最も厳しく注がれているのも、サーブのようだ。ツアーに帯同するミルヌイが、離れた地からモニター越しに慧眼を光らせるチャンと相談し、共通見解を錦織に伝えているという。

 多少の上下変動はありながらも、全体としてはサーブの好調を維持できた背景には、このようなチームとしての取り組みがあった。ただ、着実な改善を見せるサーブだが、これも錦織が掲げる理想像の実現に必要な、ピースのひとつに過ぎない。

 昨年9月の復帰以降、錦織はネットプレーを多く取り入れ、より攻撃的なテニスを標榜してきた。勇気あるトライ&エラーや、意思ある逡巡を繰り返しながら、前進している実感を掴んでいるのだろう。

「もうちょっとかな、と思います。前に出るチャンスはたくさんあったのに、まだ足が動いてなかったり、自然にできてないので、そこはコーチとも相談しています」

 目指す地点を踏まえたうえで、彼は現在地をそう捉えている。

「以前の自分のレベルに戻れると感じているか?」

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