大坂なおみ、セリーナの涙に本音をポツリ。「永遠にプレーしてほしい」 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 試合開始から、1時間15分。大坂が5−4とリードし迎えたサービスゲーム。最後のゲームも、161キロのエースで幕を明け、そしてセリーナのショットがネットを叩き、幕を閉じた。

 その時、大坂は控えめなガッツポーズをファミリーボックスに掲げると、うつむき気味にネットに歩み寄りながら、「現実味がない」存在へと頭を下げた。

 セリーナより少し早くネット際に着くと、足を揃えて再び会釈をする。近づくセリーナに対し、どうするべきか一瞬迷ったように見えたが、セリーナが両手を広げ肩を抱くとそれに応じ、そして......最後にもう一度、頭を下げた。

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 会釈は、彼女がいつの間にか覚えた仕草である。姉のまりから「意味がわからないから止めなよ?」と言われても止めず、母の環さんが「教えた訳でもないのに、いつの間に」と不思議がる、シャイな少女が体得した感謝の表出法である。

 そのいかにも日本的な所作が、最大の敬意の表れであることは、セリーナにも伝わっただろう。万雷の拍手を浴びる23度のグランドスラム優勝者は、観衆に毅然と手を振り、掌を胸に当ててコートをあとにした。

 涙の跡を隠しもせず会見室に現れたセリーナは、「あれは、オーストラリアのファンへの別れの挨拶か?」と問われると、「もし別れだとしても、誰にも言うことはないわ」とぎこちなく笑う。

 続く質問に応じようとした時、こみ上げる涙を押し止めることができず、「もう、おしまいね」と席を立つと、走るように会見室から去っていった。

 その、約1時間後。

 同じ席に座った勝者は、「もしかしたら、これがセリーナの最後の全豪かも」と記者に問われると、少し目を伏せて答えた。

「そんなこと言われると、悲しい。彼女には、永遠にプレーしていてほしいもの。私のなかの"子ども"が、そう言ってるの」

 セリーナを退け、決勝に歩みを進めた大坂は、2月20日、通算4度目のメジャータイトル獲得をかけ、これが初のグランドスラム決勝となるジェニファー・ブレイディ(アメリカ)と対戦する。

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