錦織圭、全豪OPは初戦から試練。よみがえる激闘の記憶「やりにくい相手」

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「僕はちょっと、複雑な気持ちというか......」

 全豪オープン開幕を2日後に控えた2月6日。ATPカップでのディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン/世界ランク9位)戦を終えた錦織圭(世界41位)は、会見で開口一番、ポツリとそんな言葉をこぼした。

「1試合目のほうが、たぶんボールの感覚がよかったので。今日は(試合の)始めと最後のほうも、自分のしたいプレーと身体の動きがついてきてくれなかった。

 自分が昔やっていた早い展開やプレースタイルを心がけた時は、なかなか感覚がしっくりきていない分、ちょっとミスしたりサイドに外れたりがすごく多かったので、ちょっと、うーん......頭と身体が、まだ一致していないような感覚が今日はとくにありました」

本調子を掴めないまま全豪オープンに臨む錦織圭本調子を掴めないまま全豪オープンに臨む錦織圭 選手が覚える肉体と思考の歯車の噛み合いは、繊細にして精緻だ。

 この日のシュワルツマン戦のスコアは、1−6、7−6、0−6。錦織が「ボールの感覚がよかった」と述懐する1試合目の対ダニール・メドベージェフ(ロシア)戦は2−6、4−6。

 相手があってのことではあるが、スコアだけを見るのなら、セットを奪ったシュワルツマン戦も十分評価に値するように思われる。

 あるいは詳細なスタッツを見ても、シュワルツマン戦のストロークウイナー数は、相手の13本を上回る16本。ネットプレーは初戦より減ったものの、ベースラインからのポイント獲得率はメドベージェフ戦より高かった。

 それでも、シュワルツマン戦後の錦織は「なんとなくリズムが掴めてきそうな......でも、まだ来なそうな」と表情を曇らせる。声や、さりげない仕草が醸す感情は「日に日にいいリズムでプレーできている」「2セット目は全部よかった」と語ったメドベージェフ戦後とは、大きく趣(おもむき)を異にしていた。

 錦織がわずか一日を挟んだふたつの試合で、ここまで手応えに差を覚えたのには、いくつか理由があるだろう。

 ひとつは、久々の実戦で受けた身体へのダメージ。いかに厳しいトレーニングや練習を積んでも、実戦の翌日に覚える疲労や筋肉痛は、比べものにならないと選手から聞く。

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