錦織圭、31才で変革の時。ネガティブ要素に打ち勝つことができるか

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 ラケットをひと回り大きなものにしたのも、攻撃的スタイルの一助となった。2015年の夏には、相手のサーブと同時に猛然とコート内へ駆け込み、リターンするやいなやネットに詰めるという超速攻も披露する。攻撃性と遊び心が融合した、まさに「フェデラー/エドバーグ」時代を象徴する戦術だった。

 少年時代から知る兄貴分をコーチにした点では、錦織の選択はナダルとカロルス・モヤの関係性にも近いだろう。

 ナダルがモヤに助けを求めたのは、2016年末のこと。手首などにケガを抱え、早々にシーズンを切り上げた30歳の冬だった。

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 12歳からナダルを知るモヤは、ナダルの肉体的な衰えを、あるがまま受け止める。そのうえで「今の彼は、以前よりも経験と賢さがある」と、得たものに目を向けたとモヤは言った。

「常に100%でプレーするのではなく、時に我慢し、効率よく攻める」という戦術的思考を植えつけ、武器であるフォアハンドも段位的かつ理論的に、効率的な打ち方へと変えた。

 結果、2017年のナダルは全仏、全米オープンで優勝。年間1位にも返り咲いたナダルを、モヤは「今の彼は以前と異なる選手だと言える。より成熟しているし、テニスをよく理解している」と評した。

 今の錦織が欲しているのも、プレー面での変化と、新たな視座やインスピレーションの双方だろう。

 ミルヌイ新コーチの人間性を、錦織は「本当に冷静なんですよ」と評したうえで、「導いてくれるので、話し合いが多い分、答えを見つけやすい」と、その指導法を述懐した。

 また、戦術や技術面でも「今まで意識してこなかったことを教えてもらえている」と言う。

「ネットプレーがうまい選手なので、いろいろヒントをもらっています。ネットに出るタイミングだったり、ボレーの技術だったり。今まで聞いたことがなかったことを教えてもらえている」

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