石井琢朗の娘と久保竜彦の娘がテニス・ダブルスでコンビを組んでいた (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by YONEX

 そのような仲間のひとりに、もちろん久保杏夏もいる。

「国際レベルの大会に出る時は、杏夏ちゃんとダブルスを組むことが多いです」

 似た境遇にいる1歳年長者は、今や不動のパートナーだ。

 2大会連続優勝を狙った愛媛の国際ジュニア大会で、ふたりは準決勝で敗れた。右腕にサポーターを巻く久保は、途中からサーブを上から打つことができず、フォアハンドも強打できなくなったのだ。

「大会が始まる前の日に、ひじが痛くなって」と、敗戦後に久保が明かす。患部を冷やすため氷のうをあてた腕は、まだ子どものように細い。

「めっちゃ走ったりはしてるんですが、家系的にか、ゴツくならないんです。お父さんもお母さんも細いし......」

 その父からは、「まだ筋トレをするには早い」と言われているという。「だから、こんなにペラペラなのかもしれないけれど」と、彼女は少しぎこちなく笑った。

 コロナ禍の間に3カ月ほど完全休養を取ったため、腰の状態はかなりよくなっているという。ただ、11月に入って久々に実戦のコートに戻った時、「試合に対する気持ちがぜんぜんわからない」自分に戸惑いを覚えた。

 勝ちたいという気持ちが、湧いてこない。身体にエネルギーが満ちる感覚も薄れている。

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 以前の彼女は「相手に振り回され、走って走ってボールを打ち返しまくっている時、テニスしてるっていう快感があります」と、この競技への愛着を語っていた。その発言を本人に伝えると、「そうでしたか?」とかすかに笑って首をかしげる。

「なんにも感じていないです、今は。なにも考えていない。緊張もしないし。前は緊張していたからこそ、ここが大事とかもわかるけれど、なんにも感じない......。それが試合に慣れてないからなのか、それともダメになっているのかがわからなくて......」

 自分に問いかけるように、彼女はポツリポツリと言葉をこぼした。

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