錦織圭、実戦不足の代償は大きかったが
収穫あり。「焦っても仕方ない」

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「どうしてもショットにブレが出たり、毎回ボールも違うので。ボールの感覚がまだまだ乏しいなかで、振り切ってプレーしなくてはいけない。そこは、テニスを何カ月もしていないと必ず通らないといけないところなので」

 練習ではいい打感が掴めていても、"いかに相手に心地よく打たせないか"を競う実戦では別物だ。

 打点や球種が毎回異なり、イレギュラーもあるなかで判断力や適応力を発揮してラケットを振り切るには、リアルタイムで更新される情報を収集し、瞬時に処理する能力が求められる。その能力を再獲得していくには、実戦を重ねるしかない。

 過去のケガからの復帰のプロセスでそれを知る錦織は「焦っても仕方ないので、今は割り切ってやらなくてはならないところ。そんなに重く受け止めてないです」と淡々と述べた。

 コートに立てば、勝利を渇望するのはアスリートの本能だろう。それでも大会が終わった時には、「結果はなんでもよかった。いい試合だったし、5セットも2回できたのでよかった」と、実戦の空気に存分に触れたことを収穫とした。

「今日はラケットが振り切れていて、安定感はないものの、プレーはよかった。クレーは終わりますが、いい試合で終われたので、よかったと言えばよかった」

 今季はこの先、出られる大会はすべて出ていく予定でいる。

「自分との戦い」を乗り越え、今はまだ散在している種々のピースが、実戦経験をカギとして、カチリと噛み合う時を求めて......。

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