錦織圭、スタイル変化に「怖さはない」。数字で見る攻撃プレーの成果 (2ページ目)

  • 神 仁司●文 text by Ko Hitoshi
  • photo by AFP/AFLO

 クレーでのプレーを不得意としているエバンズは、これまで全仏オープンで1回戦を突破したことがなかったが、今回は精神的に大きく崩れることもなく、錦織に対して我慢強くプレーを続け、第4セットはエバンスが取ってファイナルセットへもつれ込んだ。

 そのファイナルセットで、錦織は第2ゲームで先にブレークして3-0とするものの、第5ゲームをブレークバックされて追いつかれてしまう。錦織は先にリードを奪ってもなかなかエバンズを突き放せず、約1年間実戦から離れていたブランクを感じてしまう場面が多かった。

「自分に無理な期待はしていなかったです。1試合1試合戦うだけなので、グランドスラムだからという緊張はなかった。最後は一番集中できました」という錦織が、第10ゲームでつかんだチャンスを活かして勝負を決めた。41本のウィナーを決めたものの、55本のミスを犯した錦織は、5セットマッチを戦う体力も問われていたが、3時間49分のロングマッチを乗り切った。

 2020年シーズンから帯同しているマックス・ミルニーコーチとの取り組みで、錦織はより攻撃的なテニスにトライしている。その試みのひとつが、ネットプレーでフィニッシュして、ポイントへつなげるのを増やすことだ。30歳の錦織が、プレーに新たな変化を加えるのは冒険のようにも思えるが、テニスを変えることへの怖さはないのだろうか。

「あんまりないですね。変えるといっても、そんなに大きく変えたわけではないので。なるべく今できるプレーをしっかり心がけている。本当に小さなマイナーチェンジで、毎年少しずつ変えていくので、そんなにやりにくさみたいなものはないです」

 錦織は、エバンズとの1回戦で、66回ネットに出て39回ポイントにつなげ、ネットプレー成功率は59%だった。セット別では、第1セット3/8(成功率38%、以下同)、第2セット8/8(100%)、第3セット15/25(60%)、第4セット2/6(33%)、ファイナルセット11/19(58%)。5セットの長丁場でのプレーを踏まえれば決して悪い成功率ではない。

「無理に(ネットへ)出ようとしてミスってしまったり、タイミングが悪く出てパスを抜かれたり、反省点はあります」と振り返った錦織だが、たとえ球足の遅いクレーでも、ネットプレーでフィニッシュしてポイントにつなげるテニスを貫こうとした姿勢は評価できる。

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