大坂なおみ、優勝への分岐点は3回戦。
「ひどい振る舞い」から多くを学んだ

  • 神 仁司●文 text by Ko Hitoshi
  • photo by AFLO

 USオープンで3回目の準優勝に終わったアザレンカは、「彼女のゲームはとてもパワフル」と前置きして、「トップレベルでいいプレーをするための豊富な武器を持っている」と大坂を称賛した。

 女子ツアー屈指のサーブ力、得意のフォアだけでなくバックにも磨きがかかったグランドストローク、格段に進化したフットワーク、そして、安定したメンタル。落ち着いてプレーさえすれば、地力に勝っていたのは大坂であり、だからこそ、百戦錬磨のアザレンカを逆転して、ティファニー製のシルバートロフィーを手にすることができたのだ。 

「USオープンでプレーしたすべての試合から、たくさん学ぶことがありました」と振り返る大坂は、マルタ・コスチュク(137位、ウクライナ)との3回戦がターニングポイントだったと振り返る。

「マルタとプレーした時に、もっとも学んだことが多かったです。自分でひどい振る舞いだったと感じていましたから。あの時からよりポジティブにトライし続けようとしました。そして、それが自分にとってはうまく機能しました」

 失うものは何もない18歳のコスチュクに手を焼き、大坂は心を乱してラケットを投げてしまったが、そこから立て直して勝利を手繰り寄せた。

 そして、今大会、最大の難局を乗り越えて最終的に優勝に辿り着けたのは、やはりウィム・フィセッテコーチによる功績が大きい。

「(大坂に)あまりにも高すぎる期待値を設定するのが大きな間違いだった。正しいマインドセットで、選手を試合へ送り出すのが僕のコーチングです。勝つことばかりにフォーカスすると、物事は間違った方向に行きます。コートで必要なのは、試合へ臨む姿勢、ゲームプラン、ポジティブなエネルギー、これらがパズルを形成する一つひとつのピースとなって揃った時に、勝利はついてくるのです」

 フィセッテコーチは、大坂と臨んだ2回目のグランドスラムで早くも結果を出し、まさに"グランドスラム優勝請負人"の面目躍如となった。

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