大坂なおみ、数字に現れなかったすごさ。「冗談みたいなレベル」の試合を制す (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 そしてこの日の大坂には、このひとつのブレークだけで、勝利へと走り切るに十分だった。試合時間は2時間8分。サービスウイナーで勝利を決めた瞬間、コートサイドで見ていたウィム・フィセッテコーチの口が小さく「ワオ」と動いた。

 今大会で最も厳しい戦いとなったブレイディ戦の最中、大坂の脳裏を幾度もよぎったのは、昨年1月全豪オープン決勝のペトラ・クビトバ(チェコ)戦だったという。

 あの時のクビトバの攻撃的姿勢と高質なショットが、ネットを挟むブレイディに重なる。同時に、自分があの試合をいかに制したかも、彼女は思い出していた。

 これまで戦ってきた数多の試合で、種々の相手の異なる球を打ってきた心身の記憶......。それらが真新しい対戦のなかでも生かされるのだと、彼女は言った。

 今大会の6試合すべてを戦ったセンターコートで、初めてグランドスラムの決勝に勝ち上がったのは、わずかに2年前のこと。だが、チャレンジャーの立場に身を置いたあの時と今とでは、同じ結果に含まれる意味合いや深みがまるで違う。

 その決勝の舞台で頂点をかけて戦うのは、母親となり、度重なるケガや親権を巡るトラブルをも乗り越えてきた、かつての世界1位のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)。

 それぞれの道を歩み、キャリアの異なる地点でひとつのピークを迎えるふたりは、いずれも3度目のグランドスラムタイトルをかけて、全米オープン決勝の舞台で相まみえる。

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