大坂なおみに特殊トレーニング効果。体勢整え能力がグンと向上した (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 その中村と大坂が、とくに力を入れてきたのが『End-rangeトレーニング』だという。

 これは、身体の最大可動域周辺値で態勢を維持したり、運動能力を上げる効果を狙ったもの。中村いわく、「瞬時に動いたり動かされたギリギリの状態で、崩れそうな体勢を支えて整える能力の向上が目的。それにより、ストライクゾーンやスイートスポットがより広がる」という。

 そのトレーニングの効能を大坂は、早くも前哨戦の時点で実感できていたという。身体を目いっぱい伸ばした状態からでも、以前よりも多くのボールを打ち返すことができたからだ。

 そのような高い目的意識を持ったオフ期間中のトレーニング、そして無観客により一層増した集中力が、ジョルジ戦で見せた堅牢なプレーの源泉となる。

「相手のエラーを誘うことを考えはしない」と大坂は言うが、ジョルジの強打を受け止め、左右に振られても体勢を崩すことなく打ち返す安定感が、相手のミスを誘発する。

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 第1セットは立ち上がりから5ゲーム連取に成功し、6−1で奪取。第2セットは第4ゲームでこの試合初のブレークの危機に直面したが、サービスウイナーを決めてしのぐ。最後はセンターにエースを叩き込んで、このゲームもキープに成功した。

 これで完全に主導権を手もとに収めた大坂は、最後も2連続サービスウイナーで1時間10分のスピード決着。ウイナーを14本奪う攻撃的な姿勢を貫きながら、エラーはわずか11本に抑えての圧巻の勝利だった。

 試合が終われば、今大会の規則となっているマスクを装着し、そこには警察に取り押さえられて犠牲になった黒人男性「Elijah McClain(エリジャ・マクレーン)」の名が記されている。

 試合後のオンコートインタビューや会見の席でその件について問われれば、「彼の存在はあまり広く知られていないので、知ってほしかった」と明瞭に答え、喧騒に背を向けることはない。

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