大坂なおみが抱えていた不安。それでも「負けることは許されない」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

 一方、ダブルス巧者でもあるメルテンスは、巧みなネットプレーで大坂にプレッシャーをかけていった。ゲームカウント2−2からの第5ゲームも、ファーストサーブの入らない大坂を揺さぶるメルテンスが、2度のデュースの末にブレーク。試合の主導権は、24歳のベルギー人が掌握したかに見えた。

 実際にはこの後、大坂は第8ゲームをブレークバック。幾度も危機を切り抜けながら、最終的には第2セットもタイブレークの末に奪い、ストレートの勝利を手にしている。

 試合後の会見で大坂は、自身のサーブの不調に焦りを覚え、無理してポイントを奪いにいくことが何度もあったと振り返った。

 ただ、そんな時は「ひどい判断ミスをしていた」ことにも彼女は気づいていたという。だから、焦りを打ち消し、「今こうしてトーナメントに残れていることは、なんと幸運なんだろう」とポジティブな側面に目を向けた。コートでプレーし、問題に向き合い解決策を模索できること事態が、喜ばしいことなのだと。

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 第8ゲームをブレークし、ゲームカウント4−4に追いついても、流れを引き寄せられた訳ではなかった。あいかわらずトスは乱れ、エースを奪うことはできない。それでもすべてのボールに食らいつき、時に確率の高いショットを選択し、時にはリスク覚悟でコーナーに強打を打ち込んだ。

 第9ゲームでは8度のブレークの危機に直面するも、そのすべてをラリー戦で切り抜け、10度のデュースの末にキープする。終わってみれば、このゲームが準決勝最大のターニングポイントとなっただろうか。

 もつれ込んだタイブレークでは、コーナーに刺さるサービスエース、そして勝負をかけたリターンウイナーで、必死に勝機を引き寄せる。最後は相手のリターンがラインを割り、長く苦しい戦いのコートから、大坂が勝利を持ち帰った。

「今日は、2セットでなんとか勝てて本当によかった。そうでないと、身体的にかなりキツいことになっていただろうから」

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