錦織圭と父との愛情物語。
25年前の「プレゼント」と息子への願い

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

父の日プレゼンツ
テニス・錦織圭の「父子鷹」

 錦織圭と"30歳"という数字が重なった時、思い出すことがある。

 父親の清志さんが、かつてふと漏らした「あいつには、30歳になっても飛んでいてほしいけん......」のひと言。

 ひじにメスを入れた錦織が復帰のシーズンを戦っていた、10年前のジャパンオープンの日であった。

プロ転向前、17歳になったばかりの錦織圭プロ転向前、17歳になったばかりの錦織圭 錦織圭にテニスを授けたのが父であることは、今や広く知られた「始まりの物語」だろう。

 学生時代にテニスの奥深さに魅せられた清志さんは、仕事で訪れたハワイで目にした、通常よりひと回り小さいラケットに引き寄せられる。

「ジュニア用のラケットがあるんだ......」

 そんな好奇心から手に取ったラケットを、そのまま購入し、お土産として持ち帰った。

 子どもたちに多くのチャンスを与えることは、錦織家の方針だったのだろう。姉弟は様々な習い事に触れ、とくに長女は深く水泳に打ち込んでいた。

 ただ、父にしてみれば、水泳は一緒にできない。レースを応援しに行っても、子どもの姿がよく見えない寂しさもある。

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