西岡良仁らプロテニス選手たちの思い。苦境に対するそれぞれのすごし方 (6ページ目)

  • 神 仁司●取材・文・写真 text&photo by ko Hitoshi

 これだけ長いツアー中断は、選手誰にとっても初めてのことであり、「ツアー再開後には、けが人も増えそうです」という内山の懸念は、おそらく的を射ている。もしかしたらそれが、ワールドプロテニスツアーの再開が難しい理由のひとつかもしれない。

 プロテニスプレーヤーは、世界中を移動することが仕事のベースにあるため、新型コロナウイルスの封じ込め策が前提になければ、選手や関係者たちの健康や安全は決して保たれない。何より命に関わることであり、各国の入国拒否や入国制限が解除されたとしても、しばらく各国間の移動は勇気が必要とされるのではないか。やはり世界各国の安全に関する足並みが揃わなければ、ツアー再開は難しいだろう。

「テニスができる喜びと愛情を再確認できています」

 ツアー再開を待ち遠しく思いながら、これまで大好きなテニスを仕事にして、世界を転戦してプレーできていた、そんな当たり前のことが幸せなのだと今、改めてかみしめているという、31歳の伊藤の言葉が心のど真ん中に刺さって来る。

 この伊藤の言葉は、おそらく多くのテニス日本選手の気持ちを代弁しているのではないか。コロナショックの非常時に、ひとりの選手、そして、ひとりの人間として、とても大切な思いを再確認できているのだから、この時間は決して無駄ではない。そんな大切な思いを胸に秘めた選手たちは、再びテニスコートに立てる日が訪れた時に、きっとすばらしいプレーを見せてくれるはずだ。

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