コロナの猛威はウインブルドンにも。中止を決断させた「繊細な」芝問題 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO


 ウインブルドンが「延期」できなかった背景には、彼らが頑なに守り続けてきた伝統がある。

 何より大きいのは、芝の存在だ。

 芝のコートは、湿度や気温など一定の条件が揃わなくては、維持ができない。だからこそ、年間を通じ世界各地で大会が開催されるテニスのツアーでも、芝のそれが行なわれるのは6月から7月中旬に限られる。

 開催地は欧州が中心。地中海に浮かぶマヨルカ島やトルコのアンタルヤが、芝のコートの南端限界ラインだ。

 また、ウインブルドンのセンターコートは、2週間開催されるこの時期のためだけに、入念に管理されていることで有名だ。

 トーナメント中は毎日、グラウンドキーパーが土の硬さから湿度、芝生の色や密度をチェック。それは「四つんばいになり、茎の数をひとつずつ数える」というほどの徹底ぶりだという。

 気象庁と連携して気象情報を随時確認し、それに応じてスプリンクラーで撒く水量なども調整。そこまでに繊細な管理を行なうことで、かろうじて2週間、センターコートの芝を維持できるのが現実だ。

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