松岡修造が期待する復帰後の錦織圭。「ゆとり」から生まれる新しいテニス (2ページ目)

  • 神 仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi
  • 佐野 隆●写真 photo by Sano Takashi

 復帰への道を歩む中、錦織は、2020年シーズンを戦うにあたって、マックス・ミルニーを新しいツアーコーチに選んだ。松岡氏は、「ネットに出る方向性で、より攻撃的なテニスしたいという圭の判断ではないか」と推察する。

「マックスは真面目さの中に、アメリカ人的なところがあって、ちょっと遊べる感覚がある。圭には、遊び感覚が必要なんですよ。マックスは、マイケル・チャンコーチのような厳しさも伝えられる人だし、(引退してまだ2年だから)圭のヒッティングパートナーもできる。圭は、もともとボレーがうまいけれど、もっとネットプレーを取り入れないといけない。ナダルや(ノバク・)ジョコビッチ(2位)を見て、自分もああならないといけないと感じたんだと思います」

 錦織は30歳になったが、今後戦列に戻った際、トップ10へのカムバックは間違いなくできると松岡氏は断言する。問題は、錦織の悲願であるグランドスラム初優勝ができるかどうかで、それを実現させるには、「相当な体力とメンタルが必要です」と言う。

 そして、2020年には東京オリンピックが控えており、それまでにどれだけ錦織がコンディションを戻せるか注目される。

「圭は、感覚をすごく大事にする選手なので、自分のタイミングが合うまで、復帰に少し時間がかかるタイプ。オリンピックまでは、全部1回戦で負けてしまってもいいかもしれません。ただ、東京オリンピックに出た時に、彼の中でいろんな覚醒が起きるような気がするんです。(2016年の)リオで圭は、他の競技での日本選手の活躍を見て、それが日本にどれだけエネルギーを与えているのかを目の当たりにし、初めて自分がオリンピックで戦う意義を見つけることができた。復帰直後、圭は、なかなか結果が出ないかもしれないけど、東京オリンピックですべて前向きなエネルギーとして覚醒につなげることができるはずです」
 
 錦織が今回の全豪に出場できないなか、松岡が注目している選手のひとりとして名前を挙げたのが、西岡良仁(71位)だ。昨年11月に行なわれたデビスカップのフランス戦ではガエル・モンフィス(10位)を破り、先日行なわれたATPカップのスペイン戦ではラファエル・ナダル(1位)に6-7、4-6と善戦した。

「今回、西岡はどこまで行くかわかりませんよ。ドローもよくて彼のテニスができれば、ちょっとした選手には負けないですね」

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