大坂なおみ、新コーチの助言に救われる。「そのとおりにできた」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO



 同会場で行なわれたATPカップの予選リーグが終了したため、2回戦にして初めて大坂を迎えたセンターコートは、ほぼ満席のファンで埋め尽くされていた。世界4位の大坂が対戦するのは、14位のソフィア・ケニン(アメリカ)。昨年大躍進を果たした1歳年少のロシア系アメリカ人は、大坂が10代の頃から「私より歳下で、でも常に私よりも強い子」として認識していた少女だったという。

 そのケニンを「ライバル」と呼ばれることに小さな拒絶感を示した大坂だが、「重要な局面でとても固くなった」その訳は、「強い子」への意識が影響したかもしれない。第1セットは終始優勢に進めるも、ブレークチャンスやタイブレーク終盤でミスが重なり、大坂が第1セットを失った。

「よくなかった点を修正しなくては」

 自らにそう言い聞かせた第2セットで、大坂に見られた明確な変化が、初戦後に「改善点」として挙げたリターンである。

 第1セットは駆け引きにとらわれて消極的になっていたが、2セット目以降は「躊躇せず、思いっきり打っていかなくては」と心を決める。さらにはリターンで崩したあと、すぐにストレートや逆クロスに展開し、次々にウイナーを奪っていった。

 そうして第2セットを奪ったあと、冒頭で触れた、コーチに助言を求める場面が訪れる。

 その数分間の会話を経て、第3セットは6−1で奪い去った。リターンでのポイント獲得率は、第1セットの31%から、第2セットは55%に上昇。さらに第3セットでは、61%に達していた。

 センターコートに詰めかけた老若男女入り交じるファンは、昨年の全豪オープン女王の勝利を、万雷の拍手と歓声で祝福する。その優しい音を浴びながら、大坂は「初めて来た時から、オーストラリアのファンはいつも親切だった。去年の全豪では、『オージー、オージー、オージー!』のコールで応援してくれたし」と満面の笑みで応じた。

 オンコートインタビューを終えた時には、客席から「オージー」コールが起きる。その声援につなぎ止められたかのように、大坂はたっぷりと時間をかけて、ファンのサインの求めに応じ続けた。

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