大坂なおみに「プロフェッサー」の流儀が浸透。負けパターンから逆転勝利 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO



 第2セットも大坂のサーブは安定し、危なげなく自身のゲームをキープしていく。だが、彼女のなかではこの頃、かすかに変わりゆく趨勢(すうせい)への懸念が、徐々に積み重なっていたようだ。

「第2セットでは、相手は私の攻撃が読めるようになっていたみたい。どんなに強く打っても動じることなく打ち返してきた」

 そうして積もった焦燥は、第2セット終盤での「緊張で固くなり、不満を漏らすようになった」という負のスパイラルへと彼女を巻き込む。第2セットをタイブレークの末に落とし、第3セットも最初のゲームでブレークを許した時には、大坂の典型的な負けパターンかのように見えた。

 だが、この不利な状況にありながらも、大坂には支えになっていた思いがあったという。それは「私のほうが、相手より疲れていない」ということ。

 たしかに第2セットは失ったが、相手のほうが自分より走り回っていたと分析。そして大坂には、このオフシーズンに集中的に取り組んできたフィジカルへの自信がある。その自信と見立てを確信に変えるべく、彼女は長い打ち合いでも焦れずに踏ん張り、時にはパワー勝負に挑むかのように、フォアの強打で真っ向から打ち合った。

 第4ゲームを「カモン!」の叫びとともに奪い返すと、第8ゲームもフォアで攻め立てブレーク奪取。2時間7分の熱闘の最後を締めくくったのは、この日16本目のサービスエースだった。

 試合後の大坂は、この日の「自己評価」として、「サーブには満足。16本のエースは悪くない」とまずは安堵の笑みをこぼし、即座に「リターンは、もう少しよくできた」と続けた。

 実はこれらの大坂のビジョンは、新コーチのフィセッテが描く青写真と完全に対を成すものだ。

 フィセッテはコーチに就任した当初から、大坂の最大の武器として「サーブ」を挙げ、彼女が向かうべき方向性とは、「サーブからの2〜3本のショットで、打ち合いを支配すること」だと明言していた。さらには、「このレベルの戦いでは、数パーセントの差や上達が勝敗を決する」と定義したうえで、「相手のセカンドサーブでの獲得率を数ポイント上げることができる」と課題にも言及する。

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