大坂なおみに新コーチ加入で、データによる強化策と勝つ戦略を得られる (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO



 さらに興味深いのは、大坂は過去にフィセッテがコーチを務めていた時のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)と1度、ジョアンナ・コンタ(イギリス)と2度、そしてアンジェリック・ケルバー(ドイツ)とも対戦し、そのすべてに敗れていることだ。もちろん、数年前と今では彼女の実力も異なるが、確実に言えるのは、フィセッテは倒すべき対象として、大坂の武器や弱点を分析してきたということだ。

 今季、1月の全豪オープンを制して世界ランキングも1位へと駆け上がった大坂は、ロールモデル(お手本)や時代のアイコンとして、期待と注視を全世界から浴びてきた。さらに忘れてはいけないのは、すべてのテニスプレーヤーたちからも金星獲得のターゲットとして、全方位から分析の視線を向けられてきたことだ。

「今の私は、以前のように無名の存在ではない。私の試合の動画は、いたるところに溢れている」

 事実、彼女は前年優勝者として迎えた今年のBNPパリバオープン(インディアンウェルズ)で、追われる者の苦悩を口にしたことがある。

 あるいは、今季の彼女が3度敗れたベリンダ・ベンチッチ(スイス)や、2度苦汁をなめさせられたユリア・プチンツェワ(カザフスタン)は、いずれも多くの球種を操る業師にして戦略家。それらの敗戦から大坂が痛感したのは、こちらも周囲の解析の目に対抗すべく、データに基づいた強化策を練り、勝つための戦略を得ることだったはず。

 だからこそ、来季再び頂点奪還を目指す彼女が選んだのは、39歳と若いながらも経験、実績ともに文句なしのフィセッテだったのだろう。来シーズンに向けたロサンゼルスでのトレーニングには、すでにフィセッテも加わっている。

 多くの涙と笑顔でつづられた1年を11連勝で終えた彼女は、その続きを2020年にも描こうと志す。

 16歳の頃から口にしてきた、「可能な限り多くのグランドスラムで優勝する」、そして「東京オリンピックでメダルを獲る」という夢も、今季描いた上昇カーブの先にある。

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