テニスファンの心を奪う西岡良仁。170cmで世界と戦う卓越した分析力 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「イチかバチかではないけれど、ワンチャンスを取りにいく姿勢が大事なんだなと思っていて。トップの選手は何回もチャンスをくれないので、少しの小さなチャンスで攻めて自分でもぎ取っていくのが、上に勝つ要因なのかなと思っていた」

 これは西岡が、シンシナティで錦織を破ったあとに残した言葉である。そしてこれら「上に勝つための姿勢」を、彼は躍進著しい若手たちの試合を見るなかで、ことさら感じていたのだという。

「インディアンウェルズの時に、若い選手たちを見て、こうしないと勝てないんだなっていうのを感じたんです。今、若い選手が20~30位くらいにもたくさんいますが、彼らの強みは、大事なところ、もしくは重要な試合でしっかり攻められること。僕は守って粘って相手を崩すのが強みだけれど、さらに攻めることができれば、一段階上がれるんじゃないかと思ったので」

 躍進する若き力に鋭い視線を向け、その共通項を見抜き、自らの成長の糧とする。ここでも彼は、観察者であり、アナリストであり、類(たぐい)まれな実践者だった。

 これら、チャンスを掴みにいく攻撃的な姿勢に加え、今季の西岡に見られる成長が、サービスゲームの向上だ。170cmの小柄な身体がサーブに不利なのは否めない。だが、彼は相手との駆け引きを重視した頭脳戦へと持ち込むことで、キープ率を上げていく。

「僕は、サービスエースはあまり取れないので、どうやったらキープできるかをけっこう考えています。打ち方やタイミングも変えるし、トスの位置やコース、球種、回転量など、すべて目的をもって変えています。サービスゲームは、ゲーム感覚でやっている。布石をずっと打って、最後だけ変えたり、逆をついたり......ということもやります」

 そう考えるようになった頃からサービスゲームがよくなったと、西岡はうれしそうに明かしていた。

 今季最後の公式戦となった11月末のデビスカップ(国別対抗戦)は、そのように観察し、勝つための道を模索してきた西岡の集大成とも言える大会だった。

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