ダニエル太郎は勝つことで得た「境遇」に葛藤。登山で迷う心を整えた (3ページ目)

  • 神 仁司●文・撮影 text&photo by Ko Hitoshi

 また、今季はテニスの技術面でも悩み、格闘している。ダニエルは、身長190cmで、日本人選手の中では体格に恵まれているが、バレンシアでのクレーコート仕込みのプレーが抜けず、ついベースライン後方3~4mぐらいのポジションでラリーをしてしまう。

 ツアーレベルでは、攻撃へ転じる時にベースライン付近にポジションを上げて、なおかつタイミングを早めて打つ必要がある。クレーコートではもちろんハードコートではなおのこと必要な技術だ。

 そのことを痛感させられたのが、2019年オーストラリアンオープンの2回戦で、デニス・シャポバロフ(当時27位、カナダ)に敗れた時だった。なかなか自分の思い通りにポジションの上げ下げを行なうテニスができなかった。

「やらなきゃいけないことだと思います。(相手から)来るボールが速くなってくるので、難しくなってくるんですけど、(ベースライン後方の)引き気味でずっと打っちゃうと、(相手が)ミスしてくれることがあるかもしれないけれど、(相手の厳しいショットが)どんどん入ってくるゲームもある。

 自分から攻めていくポイントがないと、相手にプレッシャーをかけられない。上のレベルになると、プレッシャーの駆け引きがすごく大事だなと感じてきました。前は、ゲームでのプレッシャーはまったく必要ないと思っていました。ただ、自分の戦術があり、相手の戦術があり、僕の方が上回っていたというレベルでしたが、今はもうそういうレベルじゃない」

 ダニエルは、5年早く気づいていれば、もうちょっと成長が早かったかもしれないと考えるが、とにかく今は取り組んでいかなければならないと覚悟を決めている。

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