2019.07.17

ウインブルドンJr.を制した16歳、
望月慎太郎はコートに立つと豹変する

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO, Nakamura Yutaka

中村トレーナー(左)の指導でフィジカルを鍛える当時15歳の望月 この全豪オープンの時点での望月は、まだランキングが低く、ジュニア部門に出場していなかった。だが、5カ月後の全仏オープンジュニアでは、初出場にしてベスト4へと勝ち上がる。全仏ではその活躍に加え、錦織圭の練習相手を務めたことでも、テニスファンや関係者たちの注目を集めた。

 現在の望月が歩む道は、錦織がかつて切り開いた道でもある。

 盛田正明テニスファンドのサポートを受け、13歳の時に米国フロリダのIMGテニスアカデミーに留学。行くことを決めたのは自分の意志だが、当然ながら最初は多くの戸惑いが伴った。「行ったばかりの頃は、『How old are you?(何歳?)』すら、わからなかった」というほどに、コミュニケーションにも苦労したと言う。

 渡米し、直面した困難やカルチャーギャップは、テニスにしても同様だ。

「みんな僕より身体が大きいし、試合でも、普通にやったら負けてばっかりだった。パワーでは、確実に勝てないと思いました」

 ならば、どうすれば勝てるのか?

 コーチとともに考え、試合で試行錯誤を繰り返しながら、さまざまな球種を用いてコートを広く使い、最後はネットに出てボレーで決める独自のスタイルを築いていく。

 好きな選手はロジャー・フェデラー(スイス)だが、プレースタイルをマネしようと思ったことはない。大切にするのは、あくまで「自分の感覚」であり、「目先ではなく、将来を見据えて今に取り組む」こと。

 とはいえ、「内容のいい敗戦より、内容が悪くても、勝つほうがうれしい」という彼は、貪欲に結果も追い求めている。

「世界の一番になりたくて来ている。こんなところで負けていられない」

 朴訥(ぼくとつ)な口調で語るその言葉には、ドキリとさせられるほどの強い意志と渇望が宿る。

 今回のウインブルドンJr.優勝を、周囲は「快挙」と讃えるが、当の本人は「快挙って言われても……」と、困ったように首を傾げる。「ウインブルドン」という大会の名や、「日本人初」という惹句よりも、彼にとって重要なのは、「大会をまず優勝できたことが、自分にとっては成長だと思う」という、確かな歩みの実感だ。

 地に足をつけ、今回の優勝もあくまで、未来へのプロセスと捉える。

 その聡明さこそが、今大会で望月慎太郎が示した、最も優れたアスリートの資質かもしれない。

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