自らの理想に苦しむ大坂なおみ。考え過ぎ性分が心と身体を蝕んでいる (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 性急に自身に求める女王像が、彼女の心と身体の歯車に歪みを生んでいるように見えてならない。そのような「考え過ぎ」で「完璧主義」な性分が、今回、会見を途中離席するというロールモデルにそぐわぬ行為へと、彼女を追い詰めたのは皮肉だ。

 ここから彼女は、どこへ向かうだろうか?

 復調へのカギを問われた時、大坂は「わからない。その質問への回答を、私はまだ見つけられてない」と、声を絞り出すのに精一杯だった。

 ただ、大坂が混乱の最中にいるその間にも、女子テニス界は激しい動きを見せている。

 彼女が敗れた数時間後には、今大会最年少のコリ・ガウフという15歳の米国の少女が、憧れ続けた5度のウインブルドン女王のビーナス・ウィリアムズ(アメリカ)を破るという、新たなシンデレラストーリーが生まれた。大坂の敗戦時には色めき立っていた主にアメリカ人の記者たちも、今となっては新たなスターを追うことに必死だ。そして流動的なこの現状は、息づまる大坂の助けにもなるだろう。

 昨年の全米オープンを迎える前、大坂は「テニスが楽しめない」と感じる苦境から、なぜ自分はテニスをやっているのかという原点に立ち返ることで、「心の立ち位置を変えること」に成功し、グランドスラムタイトルを手にした。

 果たして彼女は、この試練の時を超え、女王への通過儀礼を無事終えることができるだろうか?

 おそらくは今回も、復調へのカギは、彼女の心の中にある。

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