神様がくれた全仏でのギフト。フェデラーとナダル、認め合う最高の関係 (2ページ目)

  • 神 仁司●文・撮影 text&photo by Ko Hitoshi

 実はフェデラーにとって、全仏での試合は4年ぶりだった。

 2017年と2018年は、クレーシーズンをスキップして、グラス(天然芝)シーズンに備えていたが、今季フェデラーは、コンディションが良好なことから、クレーシーズンを戦うことを春に表明。体力的な負担の大きいクレー大会に出場するために、周到な準備を行ない、家族とコーチ陣から同意を得た。そして、最終的に全仏への出場に青信号が灯ったのだ。

「パリに戻って来られて、とてもうれしい。今の自分のキャリアにおいては健康であることが本当にキーになる」

 こう語るフェデラーは、2009年ローランギャロスで念願の初優勝をすると同時に、テニスの4大メジャーをすべて制覇するキャリアグランドスラムも達成したことがあり、決して忘れることのない記憶と記録になっている。

「もちろん10年前にここで優勝したことは、夢の実現でした。自分の人生の中ですばらしい瞬間のひとつでした」

 そして、ローランギャロスへの帰還を決めると、ナダルとの再戦も自然とフェデラーの意識の片隅に生まれた。

「クレーで戦うことを決めた時、できればラファとの対戦が実現すればと思っていた。彼を避けようとする心構えなら、クレーで戦うべきではない。この心構えが、準決勝までいいプレーができた助けになっている」

 一方、ナダルは、2005年に初優勝してから実に11回もの全仏のタイトルを手にしてきた。今年の準決勝までで全仏での対戦成績は91勝2敗という驚異的な数字を残しており、他の追随を許さない。"キングオブクレー"は、まさにナダルにふさわしい称号だ。これは彼の絶え間ない向上心があったからこそで、彼の努力の賜物だ。

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