棄権しなかった錦織圭に感じた希望。ナダルに完敗も気分上々で全英へ (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 第3セットの最初のゲームでは、ブレークには至らなかったものの、ストレートへのフォアのウイナーを2本連続で叩き込み、3度のブレークのチャンスを掴む。続くゲームでは、左右に深いショットを打ち分けて、ナダルを十分に後方に押し込んだところで、ドロップショットを沈めた。

 結果的には、このセットも第4ゲームをブレークされて失うが、苦しいなかでも反撃の意志は光らせる。とくに、ゲームカウント2−4の場面で挟んだ約1時間の雨天中断後は、コーチ陣と戦術を話し合ったこともあり、「やることが明確になり、光が見えていた」という。

「最後のほうは、もうちょっとやりたかった」

 それが、スコア上は1−6、1−6、3−6とナダルに完敗を喫したコートから、ベスト8の結果とともに錦織が持ち帰った思いである。

 会見時の錦織の表情に陰りがなかったのも、未来につながるその思いがあったからだろう。

「思ったより動けていた」「精神的にいい状態が続いていた」「出し切ったは出し切った」と、言葉にも前向きなものが並ぶ。それは、やはり長時間の戦いを連ねた末に準々決勝にたどり着くも、棄権せざるを得なかった1月の全豪オープン時とは大きく異なる景色だった。

 もちろん、満足に動かぬ身体に「フラストレーションがすごく溜まった」のは事実であり、その原因が、4試合でふたつの5セットマッチを戦ったことにあるのは、本人も重々承知。

 ただ、全豪時にはその解決策を「さぐっていくしかない」と伏し目がちにこぼしたのに対し、今大会では「タイブレークを落としすぎた。昨日の試合ではマッチポイントがありながら、タイブレークでセットを落とした。3回戦でも取るべきチャンスを逃した」と、即座に具体例をあげて返答する。

「ストレートで試合を決めたいが、そのためには、テニス面でも精神面でも改善すべき点がある」

 そう語る口調には、まだ自分には伸びしろがあるという、希望を感じさせる響きがあった。

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