錦織圭、全仏初戦は快調なスタート。「反省点、ほぼなし」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 第2セットに入っても、その流れに変化はない。少なくとも錦織が5-1とリードするまでは、相手に反撃の気配も見られなかった。

 だが、続くゲームで長いラリーをアリスが粘り勝った時、沸き立つ観客とともに、試合の風向きに微かな変化が生まれ始めた。

 それまでネットを叩いた相手のバックは、ライン際を捉えるようになり、錦織のドロップショットにも鋭く反応していく。ようやく見せ場を作り出したアリスのプレーに呼応して、いつの間にか9割ほど埋まったコート・スザンヌ・ランランの客席からは熱狂の声が上がり、ゲーム間にはウェーブが2周、3周とスタンドを巡る。

 第3セットの最初のゲームでは2本のダブルフォルトもあり、錦織がこの試合初めてのブレークを許した。相手の実力がまだ見極めきれぬなか、与えたリードに、嫌な思いが胸をよぎりもしただろう。

 ただ、その後も試合が進むなかで、錦織の目には、アリスのいいプレーは「そんなに続かない」ことも見えていた。相手に攻められるのは、「自分の球が浅くなり始めてから」であると感じ、フォアでボールを深く打ち込むことを心がける。ブレーク合戦となった第3セットも、精神的にも余力を残す錦織が、最後は相手のサーブコースを読み切り、リターンからのポイント連取で勝利を掴み取った。

 6本を数えたダブルフォルトや、とくに第3セットでやや落ちたファーストサーブの確率など、細かい修正点はなくはないだろう。

 それでも、未知の地元選手を6-2、6-3、6-4で破ったその試合を、錦織は「反省点は、ほぼなかった。今日の試合は、ここまでのクレーの2カ月間のなかでも、すごくよかった」と、強い手応えと自信を口にした。

 試合時間は、2時間――。ここから先、まだまだ続くだろう長い戦いを考えた時、体力温存や自信獲得などさまざまな意味において、錦織圭が、まずは快調なスタートを切った。

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