錦織圭、迫る全仏へ残る不安。「フォアが気持ちよく打ててない」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「5−0とした時点で、おそらく圭は第1セットを捨て、すでに第2セットに気持ちを切り替えているだろうと思ってしまった」と、シュワルツマンが述懐する。

 対する錦織も、「彼のボールが飛んでこなくなり、自分のプレーができはじめた」ことを感じていた。鋭いリターンで攻め、ブレークに成功した時、流れは明らかに反転する。今度は錦織が4ゲーム連取し、ついに相手の背を捉えた。

 しかし、4−5で迎えたサービスゲームで、のちに錦織が「すごくもったいなかった」と悔いる場面が訪れる。

 デュースから、2本連続でおかしたミス。勢いが止まり、第1セットを落としたことで、シュワルツマンに冷静さと攻撃的なプレーを取り戻す機を与えてしまった。

 第2セットのターニングポイントとなったのは、錦織サーブの第5ゲームの、最初のポイントだったろう。試合立ち上がりを彷彿させる激しい打ち合いの末に、13本目のショットを錦織がネットにかける。その後の錦織は、シュワルツマンの波に飲まれるように疲れの色を見せはじめ、最後はダブルフォルトで試合に幕を引いた。

 自分と似たタイプの選手に敗れたショックは、錦織にしても小さくはなかっただろう。錦織はかつてシュワルツマンのことを、「彼と練習するのは好きです。ストロークが長くなるので、自然といい感覚をくれる」と評したが、それは、相手にしても同じだったかもしれない。

 過去の敗戦から戦い方を学び、自信を得ていたシュワルツマンは、「錦織のような偉大な選手に、彼が得意とする大会で勝てたことをうれしく思う」と、初のマスターズ1000ベスト4進出を喜んだ。

 一方の錦織は、「今はどの選手も強くなってきて、楽な試合が前よりなくなってきている。そういう点では、みんなにとってタフな状況ではあります」と、年々レベルが上がり競争が激化するツアーの現状を痛感している。下からの突き上げも肌身で感じ、「なかなかいい試合が続かない」とのもどかしさも抱えながら、彼は「気持ちを切り替えていくしかない」と自分に言い聞かせた。

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