錦織圭、起死回生の逆転勝利。競り勝ってベスト8への扉をこじ開けた (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 初対戦となった錦織戦でも、ストルフはこの日ふたつ目の金星を掴むべく、立ち上がりから攻めに攻めた。迷いなくフォアの逆クロスやバックのクロスを叩きこむと、猛然と前にダッシュしネットに詰める。

 錦織も、冷静に狙いすましたショットを左右に散らしていくも、そのたびにストルフは長い手を伸ばし、絶妙なドロップボレーを沈めた。ダブルスでも結果を残している彼が、ボレー巧者であることは錦織の頭にも織り込み済み。だが、予想を上回る相手の技巧に戸惑いミスも増えた錦織が、第1セットを3−6で落とした。

 第2セットに入っても流れは変わらず、錦織は先にブレークを許す苦しい展開を強いられる。

 ただ、この頃から微かに顕在化した「逆転のシナリオ」への予兆は、ストルフのサーブの入りが悪くなったこと。そして錦織が、多彩なフォアで相手を振り回し、リズムを築き始めたこと。3度ブレークされるも、その度に直後のゲームを奪い返し、なんとか第2セットはタイブレークまで持ち込んだ。

 このタイブレークの最初のポイントが、この試合のひとつのターニングポイントになる。錦織が幾度も強打にあきらめずに食らいつくと、最後には根負けしたかのように、ストルフがスマッシュを大きくふかす。これを機に4ポイント連取した錦織が、タイブレークを制して第2セットを奪取。

 その勢いを生かし、第3セットは序盤のブレーク合戦を抜け出すと、最後は長身の相手の頭上を抜く絶妙なロブで、2時間8分の熱戦に終止符を打った。

 今季、2月から3月にかけて早期敗退が続いていた錦織は、その間、フルセットでの競り負けを喫していた。全豪オープン以降は、ファイナルセットでの勝敗は2勝5敗。それだけに今回の逆転勝利を、「苦しい試合を勝てたのは自信になります」と自己評価した。

 体力的には厳しいながらも、価値ある白星を握りしめて向かう準々決勝で戦う相手は、24位のディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン)。身長170cmの小柄なファイターは、錦織が敬意も含めた「仲間意識」を覚える存在であり、練習も頻繁に行なう仲である。

 互いに、手のうちは重々承知。だからこそ、錦織が力を発揮しやすい相手でもあり、まだ幾分おぼろげな自信を確固たる確信に変えうる一戦にもなるはずだ。

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