大坂なおみに起きた全豪との逆転現象。「心の先走り」が敗者を決めた (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 対する大坂は試合後に、幾度も「気持ちが先走った」と繰り返す。鮮明な対比を描く両者の心理は、そのまま勝者と敗者を分ける主因となった。

 前回の対戦と似た展開ながら、今回は敗者として会見室の席に座る大坂は、落胆の色を見せながらも、敗戦の事実と真摯に向き合い言葉をつむいだ。

「前回の対戦での私は、大ピンチから逆転した。だから自分には、それだけの力があると思っていた」

 そして、彼女は続ける。

「私は、前回の対戦から多くを学んだ。ただ忘れていたのは、相手も多くを学んでいたということ。プレーをしているのは、自分だけではない。自分以外のところでも、あらゆることが起きていることを失念していた」

 この大坂の言葉には、主観から客観、虫の目から鳥の目のような、世界をとらえる視座と認識の広がりが込められている。

 悔しい敗戦であることは、間違いない。だがそれは、得るものの多い、かけがえのない教本でもあったはずだ。

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