西岡良仁に拍手喝采。「大人のテニス」で強豪撃破の小兵の哲学 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 その相手との一戦で、西岡は「長い試合になる」と覚悟し、そのうえで「どちらがより攻撃的にいけるか」を勝負のカギと定めていた。

 第1セットは、ネットに出て決める西岡の攻撃性が光り先取。そして彼の真骨頂は、リードを許し迎えた第2セットの第8ゲーム。相手の低く刺さるフォアの強打に左右に振り回されるも、ベースラインの大きく後方をコートの端から端まで目いっぱい走り、幾度も高いロブを上げて窮状をしのいだ。

 ミスの少ないことで知られる相手も高度なスマッシュを打ち込むが、それでも西岡はあきらめない。最後は、ネットに出てきた相手の横を、鋭く回転をかけたフォアのストロークが抜けていく。その瞬間、客席は大歓声に包まれ、興奮とともに西岡の名を叫んだ。

「粘って、粘って、最後なんとかチャンス作って決めるのが自分の原点。ああいうプレーがたまたまブレークポイントでできたけれど、自分の持ち味がすごく出たと思います」

 自分の強さを熟知し、その勝負に持ち込めば勝てるという信念で掴んだ、彼らしい会心の勝利だった。

 3回戦では一転、自分より5歳も年下の、18歳の新鋭と相対する。

 2週間前にはリオ・オープンで準優勝しているテニス界期待の若手は、フォアとサーブを主軸にした攻撃力で、今大会でも2回戦で世界10位のステファノス・チチパス(ギリシャ)を撃破。その相手の勢いと攻撃力を警戒しながらも、戦前の西岡は「経験では僕が上」の言葉を繰り返していた。

 試合は立ち上がり、失うもののない18歳が、自慢のフォアで攻めに攻める。「第2セットの途中まで、相手はほぼパーフェクトだった」と感じた西岡は、反撃の糸口を見つけることができなかった。

 だがその時、対戦相手が感じていたことは、西岡が抱いた印象とはかなり違う。

「バックの高いところを攻められ、最初から心地よくプレーさせてもらえなかった」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る