大坂なおみ、敗北から己を知る。同期との戦いで得た新たな気づき (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 対する大坂の表情には、どこか安堵したかのような、柔らかさがにじんでいた。

「いつもなら、このようなスコア(3−6、1−6)で負けたら落ち込むけれど、今はポジティブな気分でいられる。この状況下でベストを尽くしたし、後悔はないから」

 初めて背負った「前年優勝者」の肩書きに、自分の写真やサインを切望して練習コートを囲む多くのファン。そして世界1位として、誰からも標的とされる立場......。

 それら、あらゆる『初』に満ちた大会で得たふたつの勝利を、そして敗れた試合でも最後まで前向きに戦い抜いたことを、彼女は「とても貴重な経験」として受け止めていた。

 同時に彼女は、自身が今、身を置く状況も冷静に分析している。

「もはや、私は無名の存在ではない。誰もが私のプレーを動画で見て、分析できる状態にある」

 そしてその状況を、彼女は自分を成長させてくれる糧(かて)と捉えていた。

「私のプレースタイルは、相手に左右されるものではない。すべての質を上げていけば、どのショットでも打ち勝てるようになれるから」

 自分の先を歩む同期のエリートの存在は、かつて大きな気づきを大坂に与えてくれ、そして今、彼女が進むべき道をあらためて示してくれた。

 相手のプレーに関係なく、いかなるプレースタイルや戦術をも打破できる選手――。それが、無限の可能性に満ちた21歳の女王が目指す彼方だ。

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