大坂なおみ、敗北から己を知る。同期との戦いで得た新たな気づき (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 ベンチッチがそのような紆余曲折の日々を送る間に、大坂は2度グランドスラムを制し、世界1位にも座した。

 自分の背を追い抜き、頂点へと駆け上がる同期の姿を、ベンチッチは「祝福する気持ちで追っていた」と言う。その大坂を追うかつての天才少女の目に、いざ自分が対峙した時、どのようにプレーすべきかの分析が組み込まれていたのは間違いないだろう。

 ツアーレベルでは初となる今回の対戦で、ベンチッチは大坂のショットをことごとくライン際で捕らえると、クロスに、そしてストレートへと軽やかに打ち分けた。その姿勢とテクニックは、幼少期からヒンギスの母親に「コートに踏み込み、相手の時間を奪いなさい」と植えつけられたものだ。

 大坂もそのようなベンチッチのスタイルを、十分に熟知していたという。

 ただ、大坂にとってやや予想外だったのが、「ここまで彼女の打球がフラット(無回転)」だということ。低い球筋で、時に深く、時にサイドラインぎりぎりに刺さるショットが、大坂のリズムを崩していく。序盤はその鋭い打球に対抗し、「無理に攻めようとしすぎた」ためにミスがかさみ、二度のブレークを許した。

 ならばと「終盤のほうでは多くのボールを深く返し、球種も織り交ぜていこう」としたが、その展開も「予測されていたようだ」と、大坂は振り返る。

 手のうちや心理を読まれたうえで、相手に巧みにゲームをコントロールされた......。それが、試合を外部から見ていた者が覚える印象であり、そしてコートに立つ当事者も強く感じていたことだった。

 試合後の勝者は、「試合中にこうすれば勝てるというのが見えてきた」と、満足そうな笑みを浮かべる。この勝利で、2月以降は負け知らずの11連勝。しかもその間に、大坂を含む5人のトップ10選手から勝利を掴んだベンチッチは、「今は自分のテニスにとても自信がある」と断言した。

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