気になるタイムリミット。錦織圭は
悲願達成へ「執念」を見せられるか

  • 神 仁司●文・写真 text&photo by Ko Hitoshi

 錦織圭に、"執念"という言葉が似合わないと思うのは私だけだろうか――。

 誤解をしないでほしいが、ジュニア時代から取材をしてきて、基本的に錦織のメンタルは強い方だと感じている。抜群のゲームセンスでショットメイクをする優れたテニスに加えて、勝負強いメンタルが、錦織を世界のトップへ導く力になっていた。

20代最後のシーズンを迎える錦織圭20代最後のシーズンを迎える錦織圭 だが、現在もなお世界のトップに君臨し、数々のグランドスラム(以下GS)タイトルを獲得してきたノバク・ジョコビッチ(ATPランキング1位、12月24日づけ/セルビア)やラファエル・ナダル(2位、スペイン)、ロジャー・フェデラー(3位、スイス)らと錦織を比較すると、やはりメンタルの強さに差が見受けられる。ことさらGSの大舞台では勝負強いメンタルは感じられても、錦織に"執念"を感じられたケースはほとんどなかった。そのためか、ジュニア時代からの悲願であったGS初タイトルをいまだに手にすることができていない。

 そして、2007年にプロ転向した錦織は、29歳になって2019年シーズンを迎えることになる。20代の終わりはプロテニス選手に限らず多くの人が、人生の岐路に立ち、いろいろと考えさせられるタイミングだろう。ひと昔前は、30歳前後でプロテニス選手が引退することが多かった。ちなみに、松岡修造は30歳で引退している。

 最近ではトレーニング方法や体のケア方法の発達によって、男女共に30代前半でもワールドツアーのトップレベルで活躍することは珍しくない。

 現代テニスで、29歳になった錦織の選手寿命があとわずかと考えるのは妥当ではないが、「彼がGSで初優勝できるか」という点において、それほど多くの時間は残されていないことを覚悟する時期に来ていると、彼自身が認識すべきだろう。

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