日本テニス界「究極の命題」改善へ。昔気質な男、添田豪が自ら動いた (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

 一見クールで、ともすると他人を寄せつけない孤高感をまとう添田ではあるが、その内には、後輩の活躍や日本テニス界の発展を願う、熱い思いがたぎっている。

 そのような添田の本質を象徴するのが、2015年に楽天ジャパンオープンの大会主催者推薦枠(ワイルドカード)を辞退した一件だ。理由は、直前のデビスカップ日本代表に、自身は名を連ねていなかったから。

「デビスカップに出る選手は、ツアー大会の賞金やポイントなど、いろんなものを犠牲にしている。ジャパンオープンのワイルドカードは、そのような選手に与えるべきだと思っている」

 たとえ自分の不利益になろうとも、己の信念や義は貫く......。そのような昔気質(かたぎ)の男臭さこそが、彼を今回、選手会会長職へと就かせた源泉でもあるだろう。

 現役として残された時間が限られることを自覚する今、添田は選手会会長として、環境改善やテニス普及の実現を目指すと同時に、自身の活躍も当然追い求めている。

「37歳のフェデラーが活躍しているのを見れば、年齢は言い訳にできない。自分も体力の衰えは感じないし、パフォーマンスを上げていけば、また100位内に行けるという思いもある」

 そう断言する添田には、最近獲得した新たな目標もあるという。それは、昨年誕生した子どもと一緒にグランドスラムへ行くこと――。

「家族を海外遠征に連れていこうかな、というモチベーションもあるので。外国の選手は家族との時間を大切にするし、それが結果にもつながっていると思う。僕もそういうふうになりたいですね」

 パパ業もして、あまり奥さんに怒られないようにしないと。怒られると、テニスにも影響があるので......。そう言い添田は、クールな相好を幾分崩して、照れた笑いを目尻に浮かべた。

 プレーヤー、選手会会長、夫、そして父親――。いくつもの草鞋(わらじ)を履きこなしながら、添田は第一人者として、さらなる道を切り開いていく。

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