フェデラー撃破から一転。錦織圭は「今季最悪」のどん底から蘇るか? (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 そのように一方的となった試合のなかで、趨勢(すうせい)を決した分岐点をあえて挙げるとすれば、いずれのセットも「錦織サーブの第2ゲーム」ということになるだろうか。

 第1セットの第2ゲームでは、30-15の場面からファーストサーブが入らなくなり、セカンドサーブをアンダーソンに狙われた。

「過去の対戦から、自分のリターンがカギになると思っていた」と明かすアンダーソンは、錦織のセカンドサーブでプレッシャーをかけていくことを強く意識し、試合に入っていたという。3度のデュ―スの末にブレークを許したこのゲームで、錦織は12回のサーブのうち、5本しかファーストサーブを入れられなかった。

 第2セットでも錦織は、第2ゲームの30-30の場面でダブルフォルトし、自ら相手のブレークを呼び込んでしまう。最終的に、試合を通じて錦織のファーストサーブの確率は44%。

「サーブはよくなかった。もう少しサーブが入っていれば、展開は変わっていたかもしれません」

 当の錦織も、低調に終わったサーブを大きな敗因として挙げた。

 アンダーソンが「テニスは、おかしなスポーツだ」と言うように、フェデラーに4年半ぶりに勝ったかと思えば、その2日後には、これまで勝ち越しているアンダーソンに一方的に敗れることもあるのが、テニスなのだろう。

 そのような奇妙な事象は、同グループのもう1試合のフェデラー対ドミニク・ティーム(オーストリア)戦にも発現した。

 錦織戦でミスを連発したフェデラーが、この日は「ショットが戻ってきたよ」と笑顔の復調で、6-2、6-3の快勝。一方のティームは34本のアンフォーストエラーを重ね、「ありえないミスを連発した。この会場は適応が難しいが、それでも説明がつかない」と、怪訝そうに首をかしげた。

 そのティームと錦織が、ラウンドロビン(総当たり)最終日に対決する。両者ともに次戦に向けて口にしたのは、「明日の練習で、自分のテニスを取り戻す」だった。

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