全米覇者なのにもっとも未完成。大坂なおみこそ「絶対女王」の最有力 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 このバインと似た言葉を口にしたのは、今大会の準優勝者で、昨年の全米オープン優勝者であるスティーブンスだ。昨年は全米オープン後に6連敗を喫してシーズンを終えたスティーブンスは、1年前の自身と今の大坂を重ね合わせ、共感と幾分の同情を次のような言葉に込めた。

「昨年は、全米後は試合に出ずに、休養にあてるべきだったと思っている。それくらい疲れ果てていた。それなのに彼女(大坂)は、全米の1週間後には東京に行って試合を戦った。それがとても重要だということは理解できるし、そこで結果を残したことには称賛しかない」

 コーチやライバルたちも同情を示す状況下で、今大会の大坂はスティーブンス、さらにアンジェリック・ケルバー(ドイツ)相手に2時間半の死闘を演じた。

 これらの2試合で、大坂が最大の課題として掲げたのはサーブであったが、3試合目の棄権を彼女に強いた左太ももの痛みは、初戦ですでに負っていたという。軸足となる左足の負傷がサーブに影響を与えたのは、間違いないだろう。

 初参戦となったWTAファイナルズの経験を大坂は、「2試合ともに2時間以上のタフな試合を戦ったことで、ここにいる選手たち、そして演じられる試合の質がどれほど高いものかを証明できたと思う」と振り返った。

 数字的なことを言えば、2試合ともに30%台に低迷したセカンドサーブのポイント獲得率、そして出場選手中もっとも低い確率に終わったブレークポイント取得率が悔やまれるところ。ひるがえせば、これらの数字は、重圧のかかる局面でのポイントの取り方を会得していけば、手負いの状態だとしてもトップ選手に勝てる力を大坂が備えていることを物語る。ちなみに、大坂のファーストサーブでのポイント獲得率は、出場8選手中最高を記録していた。

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