今季最終戦を棄権。
涙の大坂なおみを救ったバインコーチの笑顔

  • 神 仁司●文・撮影 text&photo by Ko Hitoshi

 今回のWTAファイナルズでの大坂は、厳しい戦いの連続で、初戦は、2017年USオープンチャンピオンのスティーブンス(6位)と2時間25分のフルセット、第2戦は、2018年ウィンブルドンチャンピオンのケルバー(2位)と2時間30分のフルセット。いずれも敗れたものの、世界トップレベルのテニスを披露した。

 毎試合グランドスラムチャンピオンやトップ8選手との戦いは、フィジカルもメンタルも常に高いものが要求された。そんなギリギリのタフマッチでも、大坂は、ファイナルズでの新しい経験を楽しむことを忘れないようにしていた。

「自分が子どもの時、世界のベストプレーヤーたちとプレーすることを夢見ていました。そして、この大会(ファイナルズ)は、その機会を私に与えてくれているんです。だから、ここでプレーする時はすごく楽しいです。そして、すごくチャレンジのしがいがあることだともわかっています。だから、ときどき少し神経質にもなったりします。いちばん大切なのはとにかく楽しむことだと思っています」

 大坂にとって初のWTAファイナルズは、RR3連敗となり、最終戦でルーキーの洗礼を浴びたような結果になったが、決して下を向く必要はない。

 たとえば、男子のノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、2007年に男子テニスツアー最終戦・マスターズカップ(当時の大会呼称、現ATPファイナルズ)に20歳で初出場した時、疲労困憊でRR3連敗だった。2007年シーズンを当時自己最高の3位でフィニッシュしたジョコビッチだったが、最終戦を戦い切るためのエネルギーはほとんど残されていなかった。だが、ジョコビッチは翌年のオーストラリアンオープンで初優勝。最終戦初出場の経験が、翌シーズンの活躍に生かされたのだ。

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