攻撃はボディブローのよう。今も昔も変わらぬ大坂なおみの勝負哲学 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 ストリコバとの一戦が「タフな試合になる」ことは、大坂も戦前から覚悟のうえ。実際に、ストリコバは立ち上がりからスライスやドロップショットを織り交ぜて、大坂を前後左右に走らせる。自ずと大坂の打つボールは、ラインを割ったり、ネットを叩くことが多くなった。

 それでも大坂は、闘志と集中力を切らさない。拳を固めて己を鼓舞し、ドロップショットやロブにも食らいつく大坂の姿勢が、そして要所要所でコーナーに刺さる時速190Km超えのサーブが、徐々にストリコバの身心に圧力をかけていく。ストリコバにダブルフォルトが目立ちだし、その好機をブレークへとつなげた大坂が、第1セットを6−3で奪い去った。

 第2セットで先にブレークの危機に面したのは、ミスを重ねた大坂のほう。だが、この窮地も大坂がサーブで切り抜けると、ストリコバの目には落胆と疲労の色が浮かび始めた。第5ゲームでのストリコバは3本のダブルフォルトを犯し、なかばゲームを献上する。そのリードを守り切り、最後は2連続サーブポイントで大坂が勝利へと走り抜けた。

 試合後のストリコバは、前日の会見時の険しさが嘘のように、晴れやかな表情を見せていた。

「私には、単複を連日戦った疲れもあった。ただ、それ以上にナオミがあまりによかったので、自分のやりたいことができなかった。彼女は重要な局面で前に踏み込み、プレーのレベルも引き上げてきた」

 大坂のプレーを全面的に称える敗者は、勝敗を分けただろういくつかのダブルフォルトについても、次のように説明する。

「私はすべてのポイントで、ボールを全力で追い、あきらめずに走り回った。だから足に疲れが溜まり、サーブのときに十分に飛び上がることができなかった」

 ストリコバのダブルフォルトは、単なるミスではなかった。それは、長い打ち合いにも焦れることなく、深く重いボールを左右に打ち分け続けた大坂の攻撃が、ボディブローのように効いて疲労が蓄積した帰結だったのだ。

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