新時代の主役へ躍り出た大坂なおみ。
松岡修造氏も驚く練習内容とは

  • 神 仁司●文・写真 text&photo by Ko Hitoshi

 ふたりの取り組みは、2018年3月のWTAインディアンウェルズ大会での衝撃的なツアー初優勝という結果につながった。グランドスラムと同じランキング上位の選手が出場し、決勝までグランドスラムと同じ7試合を戦い抜いた。これで大坂とバインコーチは、グランドスラムへのシミュレーションができあがり、優勝をより強くイメージできるようになったという。

「私は、グランドスラム1大会で7試合を戦う準備ができていますし、できると思っています。できない理由はないと思っています」

 大坂は自分に言い聞かせるようにしてこんな言葉に出していた。バインコーチに出会う前の大坂だったら、こんな発言はなかっただろう。そんな大坂の才能に、バインコーチは心底惚れ込んでいる。

「彼女の可能性は無限大です。かつて僕が一緒に練習した元世界1位の(ビクトリア・)アザレンカやセリーナ(・ウイリアムズ)と比べても、彼女ほど強いストロークを打つ選手を見たことがありません。なおみは、彼女達がいたレベルへ容易に到達できるはずです。世界1位とかトップ10とか明確な数字は言及しませんが、彼女がよくなっていくことは確信しています」

 奇しくも、今回のUSオープンは、1968年のプロテニス解禁、いわゆるオープン化からちょうど50年。この節目に、大坂が初優勝したことは偶然とはいえ、世界の女子テニス界に新時代の到来を告げるものとしてインパクトの大きいものになった。ニューヨーカーだけではなく、世界中で大坂のテニスを見た多くの人がそう感じたはずだ。

 アーサー・アッシュスタジアムで表彰式の準備をする時、ベンチに座っている大坂を、セリーナは自分のベンチからずっと見つめていた。

 実は、セリーナのグランドスラム初優勝もUSオープンだ。1999年大会で、当時17歳のセリーナが達成した優勝は、今回の大坂同様、新時代の到来を予感させるもので、自分と大坂をオーバーラップさせていたのかもしれない。

 36歳のセリーナから20歳の大坂へ、世代交代のバトンが受け渡され、いずれ大坂は新女王への階段を上がっていくに違いない。自らを完璧主義者だと語る大坂が、世界1位になることを見据えていないわけがない。

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