未知のレフティとの初戦へ。錦織圭は「好きな練習」でいい感覚を得る (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 なかでも特に充実していたのが、世界13位のディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン)との練習だ。シュワルツマンは3回戦で対戦の可能性もある選手だが、ドローの先々を見ることのない錦織には、そんなことは無関係。錦織がシュワルツマンとの練習を「好き」だと言うその訳は、安定したストロークをミスなく打ち続けるツアーきってのファイターと戦うことで、「自然といい感覚を得られる」からだ。

 実際に今回の練習後にも、「やるべきことがコート上でいい形で出てきた。フォアを使って攻めたり、バックでも前に入って攻めたり......いい形で練習はできていました」と言う。

「もう少し調整して、ベストな状態で初戦に臨めるようにしたいです」

 明るく響くその言葉には、心技体が「噛み合うタイミング」が近づきつつあることへの、予感と期待がにじんでいた。

 初戦で対戦するマクシミリアン・マーテラー(ドイツ)は、過去の対戦や練習経験もない選手。「ビッグサーバーでレフティ。ビッグショットも持っている」と警戒する錦織だが、同時に「若いので粗さもあるだろう」と、勝利へのイメージは描けている様子だ。「基本的に攻めるのが自分のスタイル。相手のミス待ちにならず、自分から仕掛けるテニスができれば」と、標榜するテニスの実践を心に期した。

 昨年は痛めた手首をギプスで硬め、「寂しい思い」を抱えたまま過ぎた夏。それから1年後......ふたたび戻ってきた思い出の大会で、錦織は「今は思い切ってやりたいです」と率直な思いを口にした。

「この場所に居られることも、いろんな人に感謝して。自分の調子にもよりますが、楽しんでやるのが一番だと思うので」

 具体的な目標は、今はあえて設けてない。

「1試合ずつ戦って。特にどこまでというのはないけれど、行けるところまで」

 持てる力を出し切り、可能な限り遠いところへ――。それが今大会での、彼が目指す地点だ。

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